とるにたらない話 2

2019-12-27
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1からのつづき

海外向けオンラインストアのUGUISUを初めてちょうど3年経ったころ、わたしはまたちょっとした人生の沼(大袈裟かもしれませんが)、みたいなところにいたのですが、和朗フラット四号館のお部屋のひとつが空きますよ、と小鳥のさえずりのようなお知らせが何の前触れもなくある日突然届きました。嘘みたいだ、というか、何かの冗談だと思いました。2012年、夏のことです。

まさか店舗を持とうなんて夢にも思っていなかったのですが(いや、「あんなところでお店ができたらいいなあ〜」と夢の夢ぐらいに思ったことはあったと思います)、お知らせが届いたときの素直な気持ちとしては、「何が何でもここで何かをしたい!」。でも、当時の状況は正直全くそれどころではありません。勢いだけでできることにも限界がある、とは流石に思ったので、一応可能性を思い巡らせてはみたもののまた次にこんな機会が訪れた時には即答できるよういろんな準備をしておこうと、今回は諦めるつもりでいたのですが、思わず背中を押してくれたのは夫でした。私と同じく(と言ったら怒られそうですが)彼にもちょっと無謀なところがあったからこそ勢いでできたことなのかもしれませんが、きっかけをくれただけでなく、いつも辛抱強くサポートして来てくれたことにはただただ感謝しかありません。

そんな風に始めることになったお店なので、もうあれもこれも行き当たりばったり!今思うと本当に信じられません。ネットショップを3年やっていたとは言っても、すでにいらしたUGUISUのお客さんは日本の外にしかいないし、私はお店で働いたこともほぼなければディスプレイのやり方も知識もゼロ、ただただこの場所で何かをしたいと思う気持ちばかりで、「こんなお店にしたい」と言うものすらほとんどありませんでした。お金も全然なくって、ビジネスのことなんて何もわからない。だけど今思えば、そこまで振り切っていたからできたのかもしれません(笑)。周りのことも全然見えていなかったと思いますが、自分で認識していた以上のたくさんの方に温かく見守っていただいていたはずです。

正直なことを言うと、最初はそんな感じでしたので、どこかで「ダメだったらすぐやめればいい」なんて言う風に思っていたんです。ですが始めてみると続けることはともかく、やめることなんて全然簡単ではないとすぐに分かりました。大事な作品や商品を取り扱いさせていただいている作り手の方たちがいて、通ってくださるお客様もすこしずつ増えて、店にだって責任がある。応援してくれる人もたくさんいる。当たり前のことなのですが・・。これはなんとかしなくてはと試行錯誤を繰り返しながら、準備期間がなかったのと、主軸にしていたUGUISUの海外向けのネットショップなどをやりながらだったので、店舗に関しては少なくとも最初の3年ぐらいは営業を続けながらなんとかお店らしくしていくための時間になっていたように思います。

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そんな感じだったのに、7年も続けることができたのは、この素敵な建物の中にあるということがとてもとても大きかったと思います。たとえそれがあっても、それだけではやはり私には難しかったでしょうけれど、何より心強かったのはお隣の「Gallery SU」さんと「ひなぎくきつね」さんの存在です。大好きな店主のおふたりから、おふたりのそれぞれのお店から学んだことは到底数え切れません。それぞれものすごく特別なお店なので、ものすごく素敵なお客様がたくさんいらっしゃるのですが、そんな素敵なかたがたにUGUISUを知っていただけたのは幸運すぎなように思います。中にはUGUISUにとっても常連のお客様となってくださった方もいらっしゃいました。あのおふたりに勧められたら、それは誰だって行ってみたくなりますもの!でも、(良い意味で)ハードルが引き上げられているとも思っていたので、おふたりの優しさに甘えるばかりではいけない、と、いつもそれなりの緊張感を感じていました。

取材の申し込みを受けたり、ちょっと課題のような出来事があった時などにおふたりと協力して対応する機会も度々あり、その度にある種の連帯感を感じられたことも嬉しいことでした。何かがあってもおふたりと一緒なら大丈夫!そんな気持ちが常にありました。もちろんいつも一緒に何かをしているわけではありませんし、お隣どうしでも毎日顔をあわせるわけでもないですが、右のお隣がSUさんで左のお隣がひなぎくきつねさんだということが、いつの間にか私にとってはとても大きいものになっていました。ほかの住人の皆さんとも、程よい距離感でとても良い関係を築いてこれたこと、そうできるよういつもまとめて導いてくださる大きな存在があってこそですが、そう言ったことも含めてこの場所に店を持ち7年の時を過ごせたことは、本当に大きな喜びでありかけがえのない財産となりました。この貴重な経験を糧に、この先のことを頑張っていきたいと思っています。

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お店を閉めることを決めた頃からでしょうか、営業日をすごく楽しんでいる自分に気がつきました。自分の中で、終わりが見えたからでしょうか。肩の力がふわっと抜けたのかもしれません。不思議な感覚がありました。今思うと、ずっとすごく緊張していたのだと思います。もっと、気楽にやっていればよかったのかも。(十分気楽だったかもしれませんが)いろんなことを心配したり気にしすぎていたのかも。自分も7年分歳をとったし、自分の中で何かが変わったのかもしれません。今が3年目ぐらいだったら、きっともっといい感じに進んでいただろうなあと思ったりもしています。いや、どうでしょうか。ね。笑

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自分のことをダラダラと、こんなに長く書いて自分でもびっくりです。どうして店舗をやめることに決めたのか、これから何をするのかというところまでは、書ききれない気がしてきました。ずっと応援してくれていたある方に閉店のお知らせをした時、「あんなに情熱を持っていたのに、どうしてやめてしまうの?」と聞かれ、ハッとしたんです。どうして・・?だろう、と。どうしてこんなに好きなのに、離れることにしたんだろう、と。ちゃんと理由があるのに、すごくたくさん考えて出した答えなのに、これからのことも楽しみで仕方がないのに、それでも本当にこれが良いことなのかと、それから正直気持ちがゆらゆら揺れました。それで、ひとつひとつ最初から言葉にしてみようかと書き始めたのでしたが、ちょっと時間をかけすぎてしまったようです。もう、明日、閉店です。今はもちろん、気持ちは揺れていません(笑)。それに念のため、ですが、悲しい気持ちで書いているんじゃないんです、全然。閉店の前日の今日は、とてもたくさんの方が来てくださいました。みなさん残念がってくださり、申し訳ない気持ちもありますが、うれしい気持ちの方がすごく大きいです。明日、最後の1日をしっかりとやって、それからあとはきちんとお礼の気持ちをお伝えしたいと思います。ここまで読んでくださった方がいたら、すごい。全然纏まりもなくすみません。でも、ありがとうございます。